51.創発現象-形状の情報-三体問題の関係性

作成日: 2023/02/18 更新日: 2023/03/25 サイトの紹介と使い方
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概要

  1. 『創発』現象の事例を記述します。
  2. 形状の情報について、持論を記述します。
  3. 三体問題について記述します。
  4. そして、最後にそれらの関係性を記述します。

創発現象

  1. 『創発』をネットで調べると、「部分となる個が、集合体となると個が持っていない性質を持つこと」「意図しないものが出来ること」などの説明があります。
  2. 筆者は、現代人類の持つ「論理」や「機械論」では、説明できない現象がこの世界で起こっていて、その現象の1つに『創発』があると思っています。
  3. 『創発』の一般的な説明は創発Wikiなどを参照してください。

創発現象の事例

原子と分子の性質

  1. 原子は、陽子と中性子から成る原子核とその周囲に存在する電子から構成されています。
  2. そして、原子は、原子核の陽子の数によって、原子番号が割り当てられていて、名前も付けられています。
    原子番号と原子名の詳細は周期表Wikiを参照してください。
  3. 驚くことに、原子番号(陽子の数)が1違うだけで、その原子の性質が変わります。
  4. さらに、原子数個が結合して分子が生成された時も、性質が変化します。
    そして、分子が分解されて原子に戻ると性質も元に戻ります。
    これらの性質の変化は可逆的で、性質の変化に化学反応により発生(消費)する熱エネルギーが関係しているか?分かりません。
    おそらく、無関係と思われます。
  5. 例えば、「水素H」2個と「酸素O」1個から「水分子H₂O」1個が生成されます。
    この時、水分子は水素と酸素の性質を受け継がずに新たな性質を持ちます。
  6. 次のことは筆者にはよく分からないのでご容赦ください。
    1. 私たちは、多数の水分子の集合体を見て水の性質を知ります。
    2. では、水分子1個の性質はどうなのでしょうか?
      そもそも、水分子1個の状態(相)は、個体・液体・気体のどれなのでしょうか?
    3. 水分子1個が水としての性質を持たないのであれば、水分子何個の集合体から水としての性質を持つのでしょうか?
    4. 「水」の定義は水の性質Wikiを参照してください。

人体組織(臓器・器官など)

  1. 私たち人間は、全ての人体組織を細胞によって構成しています。
    そして、人体組織の細胞は全て同じもので、受精卵由来のES細胞から分化したものです。
    ES細胞の分化は遺伝子の発現で、調整(性質付け)されています。
  2. 例えば、肝臓になる細胞は、肝臓細胞に必要な遺伝子だけを発現させ分化します。
  3. ところが、肝臓を構成する細胞1個1個は、肝臓としての機能(役割)を持っていません。
    肝臓の細胞が集合体となることで、肝臓としての機能(役割)を持ちます。
余談ー量子力学の二重スリット実験
  1. 量子力学で行われる二重スリット実験では、人が観察しているときに、素粒子は粒子として振る舞い、観察していないときは波として振る舞うことが分かっています。
    つまり、物質の振る舞いはミクロの世界とマクロの世界で異なり、ミクロの世界では観察行為が物理法則に影響を与えるという結果を示しています。
    『創発』と思われる現象は、(素粒子の世界と比べて)マクロの世界でのみ発見されています。
    しかし、二重スリット実験で観察という予期せぬファクターを発見したように、マクロの世界でも『創発』現象が起こるファクターを発見できるのではないでしょうか?

DNA-タンパク質の合成

  1. タンパク質は、DNAによって構成される遺伝子(染色体)情報から合成されます。
  2. DNAは4種類の構成要素(塩基)から3塩基を選んで1セット(コドン)とし、1つのアミノ酸を特定します。
  3. タンパク質は、いくつものDNAの配列によって決められたアミノ酸から合成されます。
    その過程で少量のアミノ酸が結合したものをペプチドと呼びますが、ペプチドに『創発』現象は現れません。
    いったい、どのくらいの数のアミノ酸が結合したらタンパク質になって、『創発』現象が現れるのでしょうか?
    尚、タンパク質の存在が『創発』現象と考えられる理由は、全てのタンパク質が少数個のアミノ酸配列(ペプチドなど)が持たない性質を持つためです。
  4. 上記の答えの1つは、インスリン(タンパク質)です。
    インスリンは、人体を組織するたんぱく質の中で最小個のアミノ酸配列で合成されていて、そのアミノ酸の配列数は51個です。
    動物によってインスリンのアミノ酸の配列は若干異なりますが、その他にアミノ酸51個の配列からなるタンパク質は発見されていません。
    アミノ酸51個の配列の組み合わせ(重複順列)の全数は、51の20乗(アミノ酸の種類を20としたとき)≒1.4x10の34通りになります。
    この組み合わせ数からタンパク質として意味を持つ通りは、現在動物ごとに異なるインスリン数通りしか発見されていません。
    この選択性は興味深く、『創発』の解明の糸口になるかもしれません。
    余談ですが、2億個のアミノ酸配列から構成されるバクテリアが存在するそうです。
    (51個でも2億個でも、想像するのが嫌になるほどの組み合わせ数です。この選択性は奇跡なのか?何らかの法則なのか?とても不思議です。)
    重複順列についてはこちらを参照してください。
タンパク質の人工合成
  1. 人類は、アミノ酸だけを素材とした純粋なタンパク質の人工合成に、成功していません。
    人類は、タンパク質の人工合成を行う時、途中過程にバクテリアなどを介しています。
  2. タンパク質の合成過程は、自然界においても非常に複雑で、それを解析することに現代科学技術力は達していないようです。
  3. タンパク質の合成は、およそ4段階に分けられ、それぞれの段階の過程の結果として1次構造、2次構造などが生成されるようです。
    さらに、翻訳後修飾などの工程も付加されます。
    折り畳み工程も起きます。
  4. 筆者は「基本となるアミノ酸にカルシウム(Ca)が含まれていないのに、何故「骨」は構成成分にカルシウム(Ca)を持つのか?」ということを疑問に思い調べている過程で、翻訳語修飾を知りました。
    実際には、「骨」はコラーゲンというたんぱく質とカルシウム(Ca)から構成されていますが、それが分かったからと言って、根本的な疑問は解決されていません。
  5. 一部の科学者は、「1次構造の段階(遺伝子から受け継ぐアミノ酸配列)で、翻訳後修飾は決定されている」と主張しているようです。

形状の情報

数値化した情報

  1. 私たちは、情報を数値化することを常套手段としています。
    これは、何かを測る(量る)時、単位を統一することによく似ています。
    そして、私たちが情報を処理して、結果を判断するとき、数値化しているととても便利です。
  2. しかし、この世界には数値化することが難しい情報も、以下のように存在します。
    1. 複雑性理論:『創発』現象は、この分野で研究されています。
    2. 計算量理論:NP問題や、巡回セールスマン問題などのコンピュータで処理できないほど大量の計算量を扱う問題が存在します。
    3. そして、上記の2つをまとめて、計算複雑性理論と呼ぶこともあります。
  3. 数値化したデータは、グラフ化やソート可能、木構造にできると、扱いやすいことが知られています。

巡回セールスマン問題(TSP)

  1. 巡回セールスマン問題Wikiについては、こちらを参照してください。
  2. 巡回セールスマン問題は、計算量理論に属しますが、とても不思議な問題です。
  3. 何故なら、問題で与えられたノードからグラフ理論の完全グラフを想定すれば、答えは目の前に存在するのに、いざ解こうとすると、N個のノードの場合、およそN!(階乗)の計算量が必要になるからです。
    巡回セールスマン問題は複雑ではなく、部分を見れば非常に単純です。
  4. 余談ですが、量子コンピュータは、巡回セールスマン問題を解くことが得意なようです。
    量子コンピュータと巡回セールスマン問題の関係はこちらを参照してください。

自然界の情報処理

粘菌の性質

  1. 粘菌は納豆菌など身近に存在する菌です。
  2. この粘菌は、巡回セールスマン問題の解を1回の演算で導き出します。
  3. 仕組みは、よく分かっていないようですが、粘菌は迷路すべてに触手を1回伸ばすだけで、自分の位置から最短の出口を導き出すようです。
  4. 粘菌の性質を利用した粘菌コンピュータの研究が行なわれています。

平面上の三角形と形状の情報

  1. 簡単のために、平面上の三角形を考えます。
    3つの頂点の相対位置の違いで無数(たくさん)の三角形を作ることができます。
    それを集合Sとおいて、要素数をs個とします。
  2. ある系に集合Sから無作為に選択した三角形をN個取り出します。
  3. 全ての三角形の組み合わせ(重複順列)は、sxN乗通り存在します。
    これを「形状の情報」と呼ぶことにします。
  4. この「形状の情報」を1次元の数値化かツリー構造にできる情報に変換できれば、巡回セールスマン問題なども解きやすくなると思いますが、筆者は未だ実現できていません。

立体への拡張

  1. 立体は平面と比べて、1つの立体の形状(立方体、球体など)だけでもその実体を表現するために、いくつもの階層を持った集合が必要になります。
  2. さらに平面の時と同じように、それを選択して組み合わせを作るとき、残念ながら筆者では、それを、集合構造の式(表現)で考えることすらできません。
    立方体の個々の表現を含めて、何を基準とすればいいのか分からないのです。
  3. つまり、立方体の「形状の情報」は平面と比べることもできないくらい、天文学的な情報を持っていることが分かります。
  4. 尚、「形状の情報」は座標や角度などの情報よりコンパクトな情報で個を認識できると、想定しています。

形状の情報の事例

人体組織(臓器・器官など)の相対位置を決めるもの

  1. 一般的に、人は手足、胴体、頭部などの相対位置が決まっています。
    顔も目、耳、鼻の相対位置が決まっていますし、体内の心臓や肝臓などの臓器の相対位置も決まっています。
    しかし、現代科学技術で、人体組織の相対位置を決定する因子や情報は明確にされているのでしょうか?
  2. 以下に受精卵から胎児までの成長過程を簡単に列挙してみます。
    1. 受精卵細胞1個がおよそ5回細胞分裂をしておよそ32個の受精卵細胞群(胚)になります。
    2. その胚に原腸陥入(胚に管状のくぼみができます)というイベントが起きて、胚は外胚葉(上部)・内胚葉(下部)・中胚葉(陥入部)の3つの領域に区分けされます。
      そして、それぞれの胚葉が大雑把にですが、どの人体組織(肝臓など)になるか決まります。
      さらに、胚の左右も区分されて、およそ6つの区域に区分されます。
    3. ここからは、筆者の予測ですが、胚の上下左右は子宮を基準にしているため、妊婦さんがどのような体勢をとっても胚の上下左右には影響がないものと思われます。
    4. 但し、無重力状態でニワトリの胚の実験を行ったところ、生存率は低かったようです。
  3. 以上のことから、胚の成長はその形状や位置情報に影響を受けると思われます。
  4. この分野の科学技術は、他の分野より進歩しているように思われますので、「形状の情報」と人体組織(臓器・器官など)の相対位置の関係が明確になる日は近いかもしれません。

フラクタル

  1. フラクタル図形や構造は、現代において厳密に解明されていません。
  2. 特徴は、少ない情報(方程式や描画操作手順など)で複雑な図形や構造を描画できますし、フラクタル図形や構造を描画する方法はいくつも存在します。
  3. 人体の血管や腸がフラクタル構造をしていることを含めて、自然界にはフラクタルが多くみられます。
  4. つまり、図形や構造は未知の方法(情報の持ち方)で、構築することができることをフラクタルは示唆しています。
    尚、フラクタルは、多くの性質を持っていて、少ない情報で描画できる性質はその一部です。

セルオートマトン

  1. セルオートマトンは、時間経過と共にセル(部分)の状態が変化して、その様子が意味のある図形を描画する性質を持っています。
  2. このセルオートマトンの発展形で創発のシミュレーションができるのではないかと考えています。

三体問題

概要

  1. ふたつの質点(ここでは質量をもった立体を点で表現したものと考えます)の相互作用による軌道は、ケプラーの法則で解くことができますが、3つの質点の軌道を現代科学では厳密に解くことができません(近似では可能のようです)。
    これを三体問題と呼びます。
  2. 現在、三体問題は、惑星の軌道などに用いられる質点の軌道の問題です。

古典力学(ニュートン力学)

  1. ニュートン力学で三体問題を解けない理由は、必要な方程式の数を用意することができないからです。
  2. よって、制限(条件)によって方程式の数を充足させるため、制限(条件)の分だけ厳密性を失い、近似解となります。

量子力学

  1. 量子力学では、「素粒子の位置は確率的に求められる」とされています。
  2. そもそも、量子力学は古典力学の範疇外の学問のため、三体問題も無関係になります。

ミクロでも、マクロでも

  1. 質量を持つ物質は、素粒子であれ惑星であれ、必ず重力を持っています。
  2. しかし、重力は、非常に小さい力のため、その検出は難しく、地球上で三体問題の影響を受ける現象はほとんどありません。
    さらに、小さな誤差で近似解が求められれば、地球上で三体問題を扱う必要性はなくなります。
  3. しかし、実用上問題がなくとも三体問題は確実に存在します。

最後に

  1. この世界は、「形状の情報」だけを見ても、非常に大量の計算量を持っていることが分かります。
    さらに、多くの形状は質点を持っていて、これが三体問題のような複雑性を加味しています。
  2. これらが、問題の解法を得ることを困難にしているのは、その膨大な組み合わせ数にあると思われます。
  3. 以下に仮説を述べます。
    1. 創発現象は、膨大な組み合わせ数の中から何らかの法則によって、選択的に発生する。
      その時、創発現象を起こした個の集合体は、未知の法則によって、極少ない情報と方程式などで表現できる。
      明らかに創発現象だと思われるものは、ほとんどが再現性を持っているので、法則は存在すると思われます。
    2. 原子や分子が創発現象を見せるのは、例えば、超弦理論のように多次元を考えて、この世界の物質は他次元間の要素から選択されて存在し、残りは他次元に存在する。
      そもそも、わたしたちの存在する次元は多次元と比べて下位次元とは限らない。
      但し、わたしたちの存在する次元を包括して存在する次元は上位とみなすことができる。
    3. 創発現象の法則は1つだけではない。
  4. また、創発現象はエネルギーとは無関係でありながら、生命体を構成したりするような、複雑に見える現象によって、この世界の構成の一部を担っているようです。
  5. 創発現象を解明すれば、エネルギーを必要としない永久機関ができるかもしれません。
    また、この世界の多次元性が一般的になれば、ワープの実現も可能かもしれません。
    次元が1つ上がれば、移動が1舜で行われるからです。

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